私は石
私は「石」
元は地球の一部で本家は霊峰のある大きな岩だ
私は分家で血を分けられ独立した身だ
大きな石であった私は山から河へ
河から海へ
海から陸へ
幾星霜と時間を経て移動を繰り返した
水に、風に押し流され、多くの地を巡った
その折に
体は摩耗し、風化し、砕け、浸食され、削れていった
いつしか、私は途方もない小さな石になっていた
節々に割れ欠け、もう長くはないことを悟った
多くの地を巡り巡った私はある時、奇跡的な運命を知った
可憐な石と出会う
これは雷に打たれた時と同じ衝撃だった
体が張り裂けるあの時とは違う
不思議な気持ちに包まれた
あの石のことを思うと
焼石のように熱くなる
これはきっと恋しているのだろう
このような気持ちになるのは初めてだった
もう幾何かの時も無いというのに…
後悔をして去るのも惜しい
当たって砕ければ、心身ともに崩壊するかもしれない
どっしり構えていた昔とは違い、
今は吹けば飛ぶような軽さに私は怖気づいた…
体が削られると共に自信がなくなっていたのだ
しかし、私の意志は固かった
心を奮わせていると体も震えてきた
風が強くなってきている
空気も重く、水が滴る
大きな嵐が私を襲う
可憐なあの石に何も言わずに飛ばされるのは嫌だ
必死に堪えていると
不思議と風が弱まった
あの石が私の元まで転がっていたのだ
私は精一杯の意思をあの石にぶつけた
私の恋は叶った
恋はハリケーンなどとよく言ったものだ
恋した小石は心地よい恋を成就させたのだ
過去の力や実績など関係ない
今・ここぞという場面をどうやって活かすかが勝負なのだろう
先の短い私が最後に最愛の石と一緒にいられるのは素敵なことだと思う
後悔せずに、踏み切れた私を褒めてあげたい
『私は石』
Sweet Dreams!「よい夢を」
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