1日の最後に読むのに丁度よい記事集

【Sweet dreams essay】大黒柱

私は大黒柱

私は「大黒柱」
家の中枢であり、家の中心である
いぶし銀の棟梁が魂を込めて建ててくれた
これからは若い夫婦のために縁の下から支えよう

良い報せだ
新しい家族が増えたようだ
可愛くも凛々しい男の子だ
若い夫婦はあくせくと子育てに紛争している
微笑ましいことだ

良い報せは続いた
若い夫婦は合わせて6人も子宝に恵まれたようだ
皆、仲が良い
特に長男はしっかり者のようだ

悪い報せだ
旦那の体調があまり良くないようだ
柔らかな笑顔と川のせせらぎのような落ち着いた様相
厄払いの舞をしているらしいが、病に臥せている
早く治ると良いな…

悪い報せだ
旦那が亡くなったようだ…
最後まで変わらない様相だったな
近くの大熊を退治したと聞いたから安心していたのだが…
こう、しんしんと雪が積もる山だと病気の回復は厳しかったのかもな
安心しろ、家族は私が見守ろう

良い報せだ
家族はスクスク育って皆、元気の様子だ
長男、長女は美男美女のようだ
二人ともしっかり者で頼りがいのある人物に成長したようだ

何が起こった……
一夜にして全て失った
家族からの多くの血を浴びた
なんなんだ、なんなんだ、なんなんだ…

幸いなことに、長女は重症だが、長男は無事だったようだ
辛うじて生き残った彼女を抱えて、雪山を駆けていった
心配が続く…

無事帰って来た
「おかえり」私は安堵した
程なくして、長男は目に大粒の涙を零しながら家族を弔っていた
家族の墓を建て、長男と長女は行ってしまった

長男には決意を瞳に宿していたのだ
きっと大きな決断をしたに違いない
私は大黒柱だからわかる

家族のいない家は寂しいものだ
賑やかだった声も叱る声も笑い声も今は聞こえない
竈を燃やす木の音も休む寝息も今は聞こえない
雪の重みと重い風が家を揺らす

 

 

長い時間が経った
酷く長く感じた

 

良い報せだ
長男と長女が帰ってきた
仲の良い二人も連れて
私は安堵した、泣きもした

再び、家を掃除し、風呂を入れて、食事をし、笑いが絶えなかった
私に空いた大きな空白を埋めてくれるのに十分だった

仲の良い家族は素晴らしい
私の命が尽きるまでこの家族を守り通そう

『私は大黒柱』
Sweet Dreams!「よい夢を」

エッセイについてはコチラを確認してください

エッセイについて

エッセイとは エッセイとは特定の文学的形式を持たず、書き手の随想(思ったこと・感じたこと・考えたこと)を思うがままに書き記した文章のことである らしいです つまるところ、「自由に考えたこと自由に書いていくもの」です 凝り固まった[…]

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