私は一凛の花
私は「一凛の花」
私は花…だと思う
そう信じたいだけかも…
自信は…全然ない
なんなら、朝露よりもない
なんでかと言うと、一向に花が咲かないからです
周りで育っている植物達はちゃんと朝起きて、準備して、バリバリ光合成してる
みんなOLとして慎ましく頑張っている
あ、OLは「Orderly Leaf(規律正しい葉)のことらしいです
みんな言ってるからそうなんだと思います!
植物によってはかなり早い時期から花が開いて営業成果を上げているみたいです
バリバリ働いているのを見るとキラキラ輝いていて素敵です
私も少しは役に立ちたいけど、全然評価されません!
まぁ花も咲かないから、良い縁談にも恵まれないし、
なんなら、誰も寄ってこないし…
でもめげません!
毎日慎ましく生きていれば、きっといつかはイイことだって必ず起きるはずです
私は不貞腐れずに頑張ります!
そんなある日
「私を育てたい」と言う変わった御仁が来ました
私は「こんなにも綺麗な子はいっぱいいるのに?」と不思議で仕方ありません
御仁曰く、「キミからは繊細にも光る何かを感じた」とのこと
怪しい…怪しすぎる…何か変なことされるのではないか…
不安でいっぱいです
でも困惑していても始まらないし、なぜこの御仁のことは信頼できる気がしました
私は別室に移されて、一人歌のレッスンをすることになりました
毎日、「クラシック?」という音楽を聴いています
聞いたことのない音楽でしたが、私は割と好きな曲調です
ゆったりとした曲であり繊細で、とても綺麗です
次はダンスのレッスンだそうです
曲調に合わせて軽く揺れるだけイイみたい
不思議と心躍る気がします
次はエステ
葉の汚れを丁寧に落としてもらっています
毎日御仁は私のためにあくせく努めていました
こんなにもイイ環境を用意してもらっているのだから頑張らないと!
相談できる相手がいなくて少し寂しいけれど、乗り越えてみせます
初めて蕾まできました!
一輪だけですが、私にとってこれは大成なのでは?
いいえ、まだまだこれからです!
御仁のおかげで、ココまできたのです!
綺麗な花をドーンと打ち上げてあげたいです!
芽が出ない…
あ、ではなくて「花が咲かない」
折角、用意してもらったレッスンもあまり効果がなかったみたいです
もしかしたら、お払い箱にされてしまうかも…
夢のような毎日であったけど、それを受け入れる覚悟はしてあります
そもそも、私のような花も咲けない植物を育ててくれただけでも恩があります
一生、周りから愚痴を聞いて、普通に、平然に、代り映えのない毎日が過ぎていくだけの生活から
一瞬でも輝けるような舞台に立たせてくれたことに感謝しています
日も沈んで暗くなりました
月光が顔を覗かせています
あぁ、また1日が終わるのですね
私は咲くことはないかもしれません
これまでの生涯を振り返ってみることにしました
OLとして過ごした日々
御仁に巡り合えた日
大切にそして、厳しく育ててもらった日々
いつか、貴方に「ありがとう」を伝えられたら、どんなに良いでしょう
涙を堪えていると、誘われるな音楽とともに眠りにつきます
目を覚ますとあたりはまだ暗い
月の光だけが綺麗に輝いている
御仁がゆっくりと私に近付いてくる
御仁は私に涙を流しながら「ありがとう」と一言
なぜ?どうして?
「ありがとう」は私が言いたいのに?
月光に照らされる私は一凛の白い花を咲かせていました
そこは小さな舞台
月明りのスポットライトを浴びて、満開の花を咲かせる
お客さんは御仁一人だけ
たった一夜だけ花を咲かせる
深々と降る雪の情景を思い起こすような凛とした香り
特別な貴方に特別な花を捧げることができました
こんな私をプロデュースしてくれた御仁に直接は言えない
「ありがとう」を届けられた気がします
開花が終わり、萎み始めたとき
「また来年会いましょう」と囁く貴方
もしかしたら、これは「はかない恋」だったのかもしれません
御仁が私を守る騎士にように見えたからかもしれません
夢のようなひとときを過ごし、私の開花は終わりました
『私は一凛の花』
Sweet Dreams!「よい夢を」
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