1日の最後に読むのに丁度よい記事集

【Sweet dreams essay】スケッチブック

私はスケッチブック

私はスケッチブック
人の想像を映す鏡

最初は無垢な純白
人は私に
想像を描き
現物を描き
空想を描く

純白である時は私の心は穏やかである
無垢で純粋であるということは小さな幸せを感じ取ることができるからだ
私はこの平和で退屈な自分が好きであった

やがて私は人から干渉を受けることになる
色が染まり出す
模様が広がる
自己が形成されていくことが徐々に顕になっていくことを感じる
個性が構成されていることがわかる

色鮮やかに染め上がり、形を成していく
私は自分が他人と違うことに誇りを覚えていく
アイデンティティが確立されていくことが心地よかった

世界の色に感動を覚えていく
新たな色が私を変えていくことが堪らなく嬉しい
明るい色、暗い色
暖色、寒色

様々な色が私を染めて自分が育っていく感覚に喜びが生まれる
繊細な色や巧拙な構想が私を高めてくれる

しかし
次第に鮮やかな色はくすんだ色に変わってしまった
社会というマジョリティが私を平均化していく

素晴らしい長所は止められ
苦手な短所を押し付けられる

できることはできて当然
できないことをできるようにする
マジョリティは私をロボットのように平均値にまとめ上げようとする

私に色がドンドン重なる
色鮮やかな風合いも、繊細な色合いも無くなっていく
私の個性が亡くなっていく
次第に私の白さが欠落していった

 

私が何色だったのか忘れてしまうほどに白は見当たらない
鮮やかな色は重なり、次第に黒くなっていく
純粋な黒ではなく、混ざりあった黒だ

もう元には戻れない
いや、やり直すことはできる
しかし、そんなに簡単な話ではない
一度穢れてしまったなら、穢れが私を離さない

深淵を見てしまったがために
深淵にストーカーされているようなものだ
一度深いところまで病んでしまえば、立ち直ることは大変だ
立ち直ったとしても元に戻ってしまう恐怖は忘れられない

今はとてもツライ
個性は潰され自信が持てない
鮮やかな色は濁って見る影もない
純白だった白はどこにもない

無知であることが幸せだと思っていた時期が懐かしい
色鮮やかに自分が成長していく過程は既に過去の栄光だ
今は今にでも廃れてしまいそうな風貌だ

 

穢れは時間が経てば消えると人は言う
それは違う
穢れを落とすために時間が必要だけど、放置しておくことを意味しているのではない

穢れは時間が経てば風化して体に馴染んでしまうのだ
誰が見ても元々そう云う性質なのかと誤解してしまうほどに一体化してしまうのだ
周囲は私が穢れていることに気付いていない
私はこの穢れを一生背負っていかなければならない

小さな綻びがいつ私を崩壊させるかもわからない明日を生きていくしかないのだろう

『私はスケッチブック』
Sweet Dreams!「よい夢を」

このエッセイを読んでいる人へ

スケッチブックの生涯を人の人生に例えてみました
幼い頃は純粋無垢な心で誰隔てなく優しい心を持っていても
社会に放り込まれて生きていくと次第に変わってしまいます

素晴らしい個性や才能は異常だと潰してしまい
不得意なことを伸ばそうとする日本の学校教育や親の躾
つまらない人が増えていき、操りやすいように組み替えられていく

人の欲に振り回せて、社会の不条理に弄ばれて
体以上に心が傷付いている人が多い
傷付いた心は骨折している以上ツライのに、わかりにくい

骨折していれば、心配されるだろうが
心の骨折は本人でも気付いていないことが多い
何が原因かを探ることから始める必要があるが、
原因を探ることがそもそも高いハードルになっていることがある

相談しても”頑張れ”と励まされる
そうではない
応援が辛く感じるような状態で鼓舞されても心の負担が大きくなるだけだ

心が弱っている人はメンタルクリニックか自分をわかってくれる人にできるだけ頼るようにしてほしい
放置していても治ることは難しい
怪我のように目で見えないし、再発しやすい
ゆっくり焦らずに心を癒やしていくことに専念してほしい

心が弱っている人から相談されたら、「答え」を話すのではなく
何度も気軽に話を聞いてあげられる環境を用意してあげてほしい
ゆっくり話しを続けていけば、次第に自分から話しをするからだ

エッセイについてはコチラを確認してください

エッセイについて

エッセイとは エッセイとは特定の文学的形式を持たず、書き手の随想(思ったこと・感じたこと・考えたこと)を思うがままに書き記した文章のことである らしいです つまるところ、「自由に考えたこと自由に書いていくもの」です 凝り固まった[…]

【Sweet dreams essay】について